「第55回報知キス釣り選手権・SESSYA CUP」決勝大会・名人戦…現役京大生・田島名人初防衛_ニコラクラエス
「第55回報知キス釣り選手権・SESSYA CUP」決勝大会は22日、5回会・徳島・北の脇で開催された。報知ニコラクラエス鳥取、キスSESSYACU徳島、選手福井の各予選を勝ち上がった選手や前回大会上位のシード選手、権・主催者推薦選手、P決歴代名人・選手権者ら65人が参加した。名人選手権は、戦現前名人(47~50、役京53期)の大野正浩選手(45)=北陸アカシアサーフ、・田石川鱚酔会=が勝利。人初続いて行われた「第55期報知キス釣り名人戦」では、防衛田島雅倫(あーろん)名人(22)=うみかぜサーフ、第5釣り大生島名キス研大阪=が昨年と同一対決を80尾―47尾で制して初防衛に成功。5回会・2期連続の名人位を獲得した。
午後3時40分、ホイッスルが試合終了の合図を告げた。ニコラクラエス仕掛けを回収すると、まだ試合を続けたいのか、少し物足らなさそうに竿を置いた。昨年に続いて大野前名人に連勝。「防衛してこそ本当の名人になれる。そう思っていただけに、勝ててうれしい」と見せたその笑顔は、曇天の空に光る晴れ間のように輝いた。
名人戦の幕開けはまさに圧巻だった。1投目で10尾を釣り上げ、ものの1分で挑戦者に失意を与えた。その後も3連、4連と続け、開始20分で25尾の釣果。「同じ釣りをしてたら、連掛けが得意な大野選手に勝てない。投げる回数を多くし、少しずつでも数を稼ごうと思った」と素早い手返しで打ち返し続けた。
試合中盤になると、朝から不安定だった天候がさらに悪化した。激しい雨に襲われ、野村競技委員長から試合中断の打診にも「続けます」と続行を選択。あらゆる条件での釣りを想定し、錬磨してきた名人には雨など無関係だ。ぬれて滑る餌への対応には「大きさや感触が同じなんです」と糸コンニャクを餌に見立てて、ハリへの付け外しを繰り返し練習した。
また、仕掛けにも着目した。テンビンの代わりに、道糸と仕掛けの間に形状記憶合金素材のアームを取り付けた北の脇仕様を自作。さらに、下バリ近くにガン玉を付けることによって、波打ち際でも仕掛けが浮かず、素早くなじませることができた。
ポイントの見極めもさえ、大量リードで迎えた後半も安定した釣りに終始し、試合終了を迎えた。遠投力を生かして勝利した昨年と違い、「1投で数釣る技術にたけた大野選手に、数釣りで勝てたことがすごくうれしい」。再会を果たした名人杯を腕に抱えて、懐かしそうな笑顔を浮かべ、見つめた。
全てこの試合のためだけに腕を磨いてきた。やれる努力は尽くした。たくさんの人からアドバイスを受け、「名人」と呼ばれるプレッシャーを力に変えた。「勝てたのは技術じゃない。キス釣りも勉強も、それ以外も頑張ってきた1年だった。その結果が実を結んだじゃないかな」と振り返った。着実に進化を遂げている京都大学4年生。未知への領域に向け、また新しい1年へと足を踏み出した。
選手権を制し、大野選手は「預けた物を取り来た」。昨年の名人戦に敗れ、5期連続で保持した名人杯の奪還を宣言した。田島名人との再戦を目標に北の脇独特の釣り方や、小さなキスのアタリを取るための繊細な仕掛け作り、テンビンとシンカーの調整などを余念なく、時間を費やした自負があった。
選手権では波打ち際の払い出しを狙い、アタリを取って追い食いさせる得意な釣りを披露し、制覇。目標達成への布石として、手応えを感じていた。
しかし、名人戦は誤算の連続だった。田島名人が10連スタートを決めて出ばなをくじかれ、選手権と同様のポイントを狙ったが、これまでの釣りが通用しなかった。足がけいれんを起こすアクシデントにも見舞われた。それでも勝利を信じて浜を駆け続けた。
巻き返しを図った後半戦では、小型メインだった群れとは違い、大型のキスが交じり出した。それらをかわしながら徐々に差を縮めるも、時間は止まってくれなかった。
「名人は釣技はもちろん、仕掛けからエリアの選定まで用意周到。何から何まで自分の準備を上回っていた。完敗だ」とたたえた前名人。その表情には険しさが消えていた。しかし、気持ちは消えない。次回、再び頂点を目指す。
<試合経過>
この日の天候は曇り時々雨で軟風。多少波があった。時折、晴れ間が顔をのぞかせることもあれば、名人戦の最中には中断を検討されるほどの大雨も。終始、不安定な天候のなかで開催された。競技は海水浴場のシャワー施設前に設置した本部前の浜を中心に、1回戦は海に向かって左側の約450メートルをAブロック、右側の約450メートルをBブロックに、海岸右端周辺を名人戦のエリアに設定。試合はそれぞれ2時間ずつ行った。
【1回戦】午前7時に開始。抽選で32人がAブロック、33人がBブロックに入った。抽選番号順に割り当てられたポイントで1投し、その後は移動可。両ブロックとも場所ムラが激しく、最初に好ポイントを陣取った選手がコンスタントに釣果を伸ばした。Bブロックの瓜生選手は「残り30分でようやく釣れた」と3連するなど、終了間際で釣れ出す形となった。Aブロックは24尾の吉田選手を筆頭に14尾以上の8人が、Bブロックからは15尾を釣った橋口選手らを始め10尾以上の8位タイ11人、合計19人が決勝戦に進んだ。
【決勝戦】午前10時にスタート。AとBを合わせたエリアで行った。食いは渋くなった。1回戦同様に波口でしか釣れず、「波のリズムを見て、小さくなった時に止めておいた仕掛けを引いてアタリを取った」と廣瀬選手。ポイントを探り、移動する選手が多いなかで、優勝した大野選手はエリア右端で、2位の西向選手はようやく探し当てたポイントで7連するなど釣果を伸ばし、22尾を仕留めた。3位の竹田選手も丁寧に波口を攻略して15尾を釣り上げた。
【名人戦】午後1時40分から2時間。ジャンケンに勝って田島名人が海に向かって右側、大野選手が左側に入った。狙いはもちろん波口。1投目で10連掛けした田島名人は、手返し素早くハイペースで釣り上げていった。一方、大野選手は波際を慎重にさびくもアタリは遠く、前半で重いビハインドを背負った。後半戦でも田島名人は手返しよく仕掛けを投入し、6連を含む17尾の釣果。大野選手は連掛けを狙って入念にキスを誘い、コンスタントに釣り上げたが栄冠奪還は実らなかった。
野村道雄・競技委員長 「釣果が伸び悩む中で歴代の名人、選手権者が上位を独占した。これも日頃の努力のたまものだと思う。名人戦は、お互いが技を出し切って釣り場のキスを釣り尽くした感じがした。今後も高みを目指して精進を続けてください」
2位・西向雅之選手 「釣れなくて移動を繰り返してるうちに、たくさんの人から情報をいただいた。いろんな人たちの力を借りて釣りが出来てるんだなと感じた。感謝です」
3位・竹田剛選手 「精いっぱいやった結果なので満足している。また上位に食い込めるように頑張りたい。楽しめました」
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